FOMC:利下げ開始・景気配慮で先手を打つ

09-19 作者塚本 憲弘

0.5%の大幅利下げを決定

現地9月18日に米国のFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、政策金利は0.5%引き下げられ4.75-5.0%となりました。声明文では、インフレが持続的に2%に向かいつつあることに自信を深めているとされる一方、減速する労働市場に対し最大雇用を支える強い意思表示から今回の利下げに至ったことが示唆されています。投票に際してボウマン理事は0.25%の利下げを支持しており、決定は満場一致ではありませんでした。なお理事の反対は2005年以来となります。

今回は3ヶ月に1回の経済予想が示されております。GDPは長期見通しをやや上回る2%での推移、失業率は足元(8月4.2%)からやや悪化するも、その後安定的な推移が見込まれます。

【図表1】GDP/失業率予想
出所:FRBよりマネックス証券作成

同時に物価見通しも公表されますが、前回よりも落ち着いた推移が想定されております。経済・物価はソフトランディング推移が示されました。

【図表2】物価/コア物価の見通し
出所:FRBよりマネックス証券作成

長期見通しは2.9%、断続的な利下げ姿勢を示す

そしてFRB(米連邦準備制度理事会)当局者による政策金利の見通しです。以下中央値になりますが、2024年内は残り2回の会合で0.5%の利下げ、2025年は4回分、2026年は2回分の利下げにより中立的な水準と目される長期見通し2.9%に到達します。労働市場を守るために断続的な利下げをしていくスタンスが示されたと言えるでしょう。

【図表3】政策金利予想
出所:FRBよりマネックス証券作成

FOMCメンバーの政策金利見通しをみると見方が割れていることがうかがえます。2024年は上述の中央値で0.5%の利下げは9名(+1名はそれ以上の利下げ)に支持される一方、7名は0.25%の利下げ、2名は据え置きを想定しております。その後もやや見方は割れるものの、2025年は断続的な利下げ局面が見込まれます。なお、金利先物市場に見る市場予想では2024年、2025年に当局より積極的な利下げが期待されています。

【図表4】FOMCメンバーの政策金利見通し(黄:ドットチャート、緑:予測中央値、白:金利先物市場の予想)
出所:Bloomberg

ソフトランディングシナリオを確認する局面へ

市場予想は直前まで利下げ幅が0.25%か0.5%か割れていたこともあり、FOMC直後は株高・金利低下・ドル安の反応となりましたが、その後パウエル議長の会見が進むとともに株安・金利上昇・ドル高と当初の反応が戻される展開となりました。

その会見では労働市場への配慮が強調され、今回の決定もタイミングが良かったと発言。一方で0.5%の利下げ幅については、今後継続するペースだと想定すべきではないとけん制しました。当初の市場反応が戻された要因と見られますが、物価の落ち着きとともにFRBの断続的な利下げによる景気サポートスタンスは株式市場に、また債券市場にも歓迎されるものでしょう。

労働市場に鈍化基調は認められるものの経済全体は堅調さを維持しており、0.25%ではなく0.5%の利下げとしたのは、今般の予想にも反映された経済パス達成に向けて先手を打ったと捉えられます。ソフトランディングがメインシナリオとなる一方、断続的な利下げ局面はこれまでも経済やマーケットが高い変動性を示してきた時期でもあります。いまだ緩やかな景気減速の度合いに悪化等の変化はないか、期待されるシナリオの実現性の確認が今後のテーマでしょう。

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