【日本株】次期TOPIX移行へのルール公表が迫る

09-19 作者和島 英樹

次期TOPIXに関する移行ルールが9月末に公表される

9月末にかけて次期TOPIX(東証株価指数)の動向が市場の話題になりそうだ。東京証券取引所は2024年6月19日に、「TOPIX等の見直しの概要」を公表した。それによると、主要なベンチマーク(投資基準)であるTOPIX(東証株価指数)について、採用基準を一段と厳しくし、銘柄を絞り込む動きがさらに強まることが明らかになった。一方、スタンダードやグロース銘柄からも新規に採用されるようになる。ルールの公表が9月末に迫り、新規採用銘柄への関心が高まっている。

東証によると、日本の市場平均を示すベンチマークとして、国内外でパッシブ(指数連動)による運用資産は83兆円(2023年8月末)と、日本の時価総額の約1割の規模に達している。従来は現プライム市場に上場していれば、全ての銘柄がTOPIXに採用されるため、業績や企業努力が反映されない傾向が強かった。

東証では2022年4月に従来の東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックの各市場をプライム、スタンダード、グロース市場へ再編を実施した。これに合わせて、まずはTOPIXと特定の市場区分との関係を切り離すとともに、TOPIXの連続性を保ちつつ流動性を加味するなどし、採用銘柄の選別をしている。具体的には流通時価総額が100億円未満の企業を段階的に外し、2022年10月から10段階的に分けて構成比率を下げ、現在のおよそ2,000銘柄から約1,700銘柄に絞り込む。この作業は2025年1月に終了する。

また、東証は2024年6月に、次のステップとしてさらに1,200銘柄に絞り込む新たな改革案を公表している。銘柄選定の対象をこれまでのプライム市場だけでなく、スタンダードやグロース市場に拡大するとともに、浮動株時価総額や売買代金回転率など流動性に基づいて、定期入れ替えも実施される。TOPIXは「プライム全銘柄の値動きを示す指数」ものだったが、2次改革後は「日本の代表企業の値動きを示す指数」に代わることになる。

初回の銘柄選定は2026年10月に実施するとともに、2028年7月まで2年程度をかけて段階的に実施していく。開始や移行期間が長いのは、市場への影響を緩和し、周知させるためである。次期TOPIXに関する移行ルールは、2024年9月末に公表される予定である。特にスタンダード、グロース市場から新規に採用される銘柄が注目されるため、具体的な基準内容に関心が高まっている。

新基準では、年間売買代金回転率(年間にどれだけ活発に売買されるか)と浮動株時価総額(実際に市場に出回っている株式の時価総額)により選ばれる。大手調査機関ではこの基準の上位銘柄をピックアップしている。

各調査機関による新基準の上位銘柄をピックアップ

各調査機関の資料などから代表例を取り上げると以下の通りとなる。

出所:各社資料、報道などから筆者作成

スタンダード市場の銘柄が多いが、これはプライムを断念してスタンダードを選択した企業もあり、流動性基準が満たされているなどが要因とみられる。グロース市場ではこのほか、全自動の資産運用サービスのウェルスナビ(7342)、Vチューバー事務所運営のカバー(5253)、創薬ベンチャーのサンバイオ(4592)、宇宙ベンチャーのispace(アイスペース)(9348)、宇宙衛星のQPS研究所(5595)などを有望視する向きもある。また、大型のIPO(株式新規公開)銘柄への関心も高まりそうだ。

基準が厳しくなる一方で、スタンダード、グロースから新規採用し、既存のTOPIXからプライム銘柄が除外される可能性も高まる。流通時価総額が低水準かつ、流動性に欠ける銘柄には留意したい。

なお、東証の6月時点での試算によると、現行のTOPIXの浮動株時価総額(中央値)約350億円、1日当たり売買代金(同)約2.5億円。次期TOPIXでは浮動株時価総額(同)約730億円、1日当たり売買代金(同)約5.9億円と2倍水準となり、改善されるようだ。また、スタンダード、グロース市場からは約50銘柄が採用される見込みとしている。

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