2024年から始まる「新しいNISA」の活用戦略

03-10 作者頼藤 太希

投資の利益にかかる税金が非課税になるNISA(少額投資非課税制度)は、2024年から制度が大幅に拡充される見込みです。

現行NISAである一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAはそれぞれの非課税枠分について2023年で買付終了となり、2024年から新しいNISA制度が始まります。政府は2024年からのNISAを「新しいNISA」と呼称していますが、現行の一般NISAとつみたてNISAを統合した制度となるので、本コラムでは「統合NISA」と呼びます。

今回は、統合NISAでの投資方針の考え方、具体的な金額配分例について、戦略を一緒に考えていきたいと思います。

2024年から始まる新しいNISA=「統合NISA」の概要と現行NISAからの改正点

まずは、現行NISAから統合NISAへ改正されるにあたり、どのような点が変わるのか制度内容を振り返ってみましょう。現行NISAと統合NISAを比較しながら改正点を確認します。

【図表1】現行NISAと統合NISA(新しいNISA)の比較
出所:株式会社Money&You作成

統合NISAでは、2024年から「制度が恒久化」「非課税期間の無期限化」「年間投資枠の拡大」「生涯投資枠1800万円(うち成長投資枠1200万円)の設定」「つみたて投資枠と成長投資枠、両制度の併用可」「売却枠の再利用可」となりました。

ただし、一般NISAから名称変更した「成長投資枠」の中で投資できる商品においては、高レバレッジ商品や株式の注意銘柄などが投資できないように変更されます。

なお、統合NISAは現行NISAと別物という形を取るので、生涯投資枠1800万円の中には、現行のNISAの投資金額は含まれません。既にNISAを活用している人にとっては、有利な改正となりました。まだNISAを活用していない人も、2023年に活用すれば、2024年からの生涯投資枠とは別枠で非課税投資ができることになります。

また、現行のつみたてNISA・一般NISAの買付は、2023年末(それぞれの商品の最終取引日)で終了しますが、これまでに投資・保有していた資産は、2024年以降も現行の非課税期間のまま保有できます。一般NISAであれば投資した年から5年間、つみたてNISAであれば投資した年から20年間です。

現行NISAの非課税投資枠は「使い切り」で、商品を売っても再利用ができなかったのに対し、統合NISAでは、非課税投資枠の管理が「残高ベース(簿価管理)」となったため、商品を売却して生涯投資枠に空きが出た場合、その空きを使ってさらに非課税で投資できるようになります。

ただし、年間の投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)以上の投資はできませんので、既にその年で年間の投資枠を使い切っていた場合、翌年以降に再投資する、ということになります。

現行NISAでは難しかったリバランス(資産の偏りを直すこと)もしやすくなっているため、統合NISA活用では戦略の幅が広がるでしょう。

統合NISAでは「コア・サテライト戦略」を実践する

私が推奨している資産運用戦略の考え方に「コア・サテライト戦略」があります。コア・サテライト戦略とは、自分の資産を長期安定成長・守りの資産(コア資産)と積極運用・短期売買の資産(サテライト資産)に分けて運用する戦略です。

資産の大部分にあたる7〜9割は「コア資産」で用意し、残りの1〜3割は「サテライト資産」にして、積極的に利益を狙っていきます。お金を目減りさせずに増やす運用を行うには、「コア・サテライト戦略」で守りながら攻めることが私は最善だと考えています。

【図表2】コア・サテライト戦略の例
出所:株式会社Money&You作成

・コア資産:インデックス型・バランス型の投資信託やETF
・サテライト資産:個別株やアクティブ型の投資信託

図表にまとめると上記内容で運用を行うことになりますが、統合NISAではコア資産だけで利用するのも良いですし、コア資産とサテライト資産の両方で活用するのも良いでしょう。

【図表3】統合NISAのコア・サテライト戦略の例
出所:株式会社Money&You作成

ここで、統合NISAの活用方法を3パターン紹介します。

活用法1:つみたて投資枠だけで生涯投資枠1800万円を使い切る

こちらは、インデックスファンドまたはバランスファンドへの積立投資を行い、生涯投資枠1800万円を使い切るという戦略です。つみたて投資枠の年間投資枠は120万円なので、「月10万円・15年間の積立投資」「月7.5万円・20年間の積立投資」「月5万円・30年間の積立投資」「月3万円・50年間の積立投資」などの戦略が考えられます。

仮に年5%で運用できた場合、50年後の資産総額は下記の図表とおりになります。下記の場合、積立満了した後も売却せず、そのまま非課税運用を続けた場合と仮定して試算しています。

【図表4】つみたて投資枠でフル活用する場合の例:投資元本1800万円を年5%・50年間運用した場合の比較
※月複利を想定して試算しました。1万円未満は四捨五入しています。積立投資をイメージするために作成しており、将来の運用成果を保証するものではありません。また、簡素化のために手数料および税金は考慮しておりません。
出所:株式会社Money&You作成

年5%の運用が仮に50年間達成できれば、8000万円〜1億5000万円とかなりまとまった金額になるとわかります。

年5%の運用を低コストで目指すとなれば、「世界株インデックスファンド」や「米国株インデックスファンド」になるでしょう。リスクを抑えながら、年3%前後の運用を目指したいのであれば、バランス型ファンドの「4資産均等型」「8資産均等型」のような選択肢が考えられます。

活用法2:投資信託とETFを活用してコア資産を作る

つみたて投資枠で世界株インデックスファンド、成長投資枠でETFに投資するという戦略も考えられます。

積立のしやすさ、再投資のしやすさを考えれば「投資信託」を選んだ方が良いのですが、より低コストのものを選びたい、定期的に配当金(分配金)に魅力を感じるのであればETFに投資するという選択肢もあります。

ETFの選択肢には、世界株ETFのVT(ベンチマーク:FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス)、全米株ETFのVTI(ベンチ―マーク:CRSP USトータル・マーケット・インデックス)、高配当株ETFのVYM(ベンチマーク:FTSEハイディビデンド・イールド・インデックス)、増配株ETFのVIG(ベンチマーク:NASDAQ USディビデンド・アチーバーズ・セレクト・インデックス)などがあります。

成長投資枠における「生涯投資枠」は1200万円となっているので、つみたて投資枠で600万円分を投資信託に積立投資し、成長投資枠で1200万円分をETFに一括投資または積立投資という方法が取れます。

また、つみたて投資枠の部分を多くし、つみたて投資枠1200万円、成長投資枠600万円という戦略も考えられるでしょう。

活用法3:投資信託(つみたて投資枠)と個別株(成長投資枠)でコア・サテライト

つみたて投資枠でインデックスファンドやバランスファンド、成長投資枠で日本株や米国株などといった個別株に投資するという戦略です。

つみたて投資枠において月5万円・20年間積立投資(投資金額1200万円)を実践し、残りの600万円を成長投資枠で活用するというのが一案です。
成長投資枠では年間240万円まで投資ができますので、タイミングをみながら一括投資をしても良いですし、ご自身なりに計画的に積立投資をしても良いでしょう。

個別株で買う銘柄は好業績銘柄をおすすめします。2022年頃から市場は不安定な動きですが、業績の良い銘柄は、下落や暴落にあってもいち早く立ち直り、成長していく傾向にあるためです。過去5期分+予想2期分の売上高及び営業利益の両者が右肩上がりで伸びているものをスクリーニングしましょう。

また、配当(インカムゲイン)狙いの個別株投資も選択肢の1つに挙がるでしょう。配当狙いであれば、米国株を選ぶのも1つの手です。米国株は年4回の配当が一般的ですし、配当金の高い「高配当銘柄」や配当金を毎年増やしている「連続増配銘柄」も数多くあります。

ただし、NISAで先述の米国ETFや米国株に投資をする場合、売却益・配当金にかかる国内課税は無くなりますが、配当金にかかる現地課税がある点には注意が必要です。(米国籍企業の場合は10%。 ADRや米国市場に上場する非米国籍株式については、 発行会社の国籍によって米国内での課税率が異なります。)なお、国際的な二重課税を調整する外国税額控除は使えません。

2023年は「つみたてNISA」を使おう

統合NISAは現行NISAと比較すると格段に使いやすくなっているので、まだNISAを始めていない方の中には、「2024年まで待とう」と考えている方もいるかもしれません。しかし、2023年だけでも「つみたてNISA」を利用することをおすすめします。

上述のとおり、現行NISAの非課税投資枠は、統合NISAの生涯投資枠1800万円とは別枠で保有できます。非課税投資金額だけで考えると、一般NISAの方が多く投資できますが、5年間しか非課税で保有できません。20年間保有できるつみたてNISAの方が、元本割れの可能性を減らし、非課税メリットが得られる可能性が高いでしょう。

また、2024年以降、統合NISAのつみたて投資枠で同じ投資信託を積立していけば、ドルコスト平均法(定期的に定額購入する方法)によって、平均購入単価を下げる効果や複利効果を享受し続けることができます。できるだけ早く始め、続けていきましょう。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。
©著作権2009-2023デイリー東京      お問い合わせください   SiteMap