<朝晴れエッセー>最北端の旅

10-22 作者admin

40有余年前、私は夏休みにバイクで北海道~東北を巡る旅を計画し学業の傍らアルバイトに勤しんでいたが、バイト先からの帰途、交通事故の当事者となり治療費などで、ためていた旅費の全てを失くしてしまった。

社会人になるとバイクはスケールダウンして通勤の足と化し、給与の多くは日々の生活費に加えて家のローン返済と子の養育費に充てられた。退職3年前、念願の大型バイクを購入して学生の頃に果たせなかった夢の実現に向けて準備を進めながら、平成最後の春に退職の日を迎えた。

世が令和になって間もなく義父が鬼籍に入り、初盆を欠礼するわけにもいかず、1年先延ばしすると、今度はコロナ禍で不要不急の外出自粛が声高に叫ばれるようになってしまい、近場のツーリングでお茶を濁しながら幾星霜。やがて目もかすみ、あろうことか白内障との診断であった。

紆余曲折を経て視界が回復したこの9月、ようやく愛機に跨り出立するに至った。JR宗谷本線無人最北端駅の抜海(ばっかい)、有人最北端駅の稚内(わっかない)、日本最北端の宗谷岬、本州最北端の大間崎などを巡る5泊7日の旅を満喫した。

精神的にも肉体的にも限界が迫り来る中、今度は最東端を目指す旅を画策している。

小越良夫(65) 京都府向日市

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