子宮頸がん防ぐHPVワクチン、救済策の期限迫る 未接種の17~27歳は9月中に初回を

09-19 作者admin

グラフィック・千葉真

「ワクチンと健診で防げる唯一のがん」とされる子宮頸(けい)がん。予防のためのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、令和4年3月まで約9年間、国が接種の勧奨を控えていた。この「空白期」に接種を逃した女性への公費による無料の「キャッチアップ(救済)接種」は、来年3月が期限。およそ半年かけて3回接種するため、初回を9月中に打たなければ、標準のスケジュール内に完了できない。専門家は「まだ一度も打っていない対象者は、今月中の初回接種を検討して」と呼びかけている。

大半の人が生涯に一度は感染

子宮頸がんは子宮の入り口付近にできる女性特有のがん。男女ともに感染するHPVが主な原因で、感染ルートは性交渉がほとんど。性交経験があれば、大半が生涯に一度は感染するとされる。

多くは自然に治癒するものの、わずかながらHPVから子宮頸がんにかかる女性がいる。20~40代が中心で、日本では年に約1万人が罹患(りかん)し、交通事故の死者数並みの年間約3千人が死亡している。

進行子宮頸がんになった場合、手術や放射線治療で妊娠がほぼ望めなくなる。そのため、初めての性交渉前のワクチン接種が推奨されている。主流の「9価ワクチン」は、約9割の子宮頸がんを予防できるとされている。

間隔空けて3回の接種が必要

小学6年~高校1年の女子を対象に平成25年4月に始まった定期接種は、打った後に全身の痛みやしびれの訴えが相次ぎ、わずか2カ月で積極的勧奨(予診票の送付)が行われなくなった。安全性と有効性が確認されたとして勧奨再開となったのは、令和4年4月。キャッチアップ接種は、この間に対象だった平成9~19年度生まれ(今年度17~27歳)の女性たちに行われている。

宮城悦子医師

キャッチアップ接種は計3回で、間隔を空けて打つ。約6カ月をかける標準スケジュールだと、初回を今月中に打たなければ来年3月までに完了できない。10月以降に始める場合は、間隔を1カ月ずつ詰めて打つことになるが、体調不良などで接種を繰り延べると、期限内に完了できない。来年4月以降は自費となり、9価ワクチンであれば1回3万円ほどかかる。

横浜市立大学教授の宮城悦子医師(産婦人科学)は「3回で10万円近くかかるワクチンが、今なら無料で打てる。キャッチアップ接種の対象で未接種の人は、9月中の初回接種を検討してほしい」と促す。

家庭で話題にしにくい?

厚生労働省が今年2~3月、キャッチアップ接種の対象者に実施した意識調査では、半数近く(48.5%)が「キャッチアップ接種を知らない」と答えた。また令和4年度の初回接種率は推計で6.1%にとどまっている。

なぜ接種が進まないのか。「空白期」の影響でワクチンの安全性に疑問を抱く女性が少なくないことに加え、「親子で話題にしにくいテーマだ」と指摘する人もいる。

HPVワクチンは「初めての性交渉までに打つことが望ましい」とされる。思春期の娘がワクチンの話題を持ち出すと、娘の性経験について気をもむ親もいる。そのため親子で包み隠さず話し合えなくなってしまうこともある。

宮城さんは「家庭でHPVワクチンを話題にする際に、無理やり性交渉と絡める必要はない」と助言。「仮に親がワクチンに否定的な考えを持っていても、それを娘に押し付けないで。本人が子宮頸がんに関する情報を集め、病気を知り、ワクチンについて考えられるような環境をつくってほしい」と訴えている。(田中万紀)

救済接種率は6%

男性接種助成広がる

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