「宝石愛は砕けない」永遠に輝き続けるルースの魅力 コレクターはさながら「求道者」

07-27 作者admin

さまざまな種類の宝石(ルース)がある(わいたろうさん撮影)

キラキラと輝く宝石は、古来、人の心を魅了してきた。ジュエリーやアクセサリーになる前の、ルース(宝石)そのものを愛(め)でるコレクターは世界中におり、日本でも年々〝宝石沼〟の人口は増え続けている。意外にも、石によっては、1つ数百円から手が届く世界で、知識があれば掘り出し物も夢ではない。たとえ大富豪でも、見たことがないような珍品を、コレクターたちは、手を尽くして探し求める。

1石に2色「バイカラー」

「一生をかけてユニークなバイカラーの宝石を集めていきたい」。1つの石に2つの色を持つバイカラーのルースばかりを集めているコレクターのわいたろうさん(30)はそう話す。小学3年のころ偶然、山梨宝石博物館を訪れたことがきっかけで、宝石に魅了され続けている。ルースがたくさん載っている宝石図鑑を夜な夜ななめるように読み、中学生ごろからインターネットオークションで、安い色石(ダイヤモンド以外の色のついた宝石)を探すようになったのが、コレクションのはじまり。「500円くらいのルースからはじめて、お小遣いでも集まった」と振り返る。

青色とオレンジ色のバイカラートパーズ
緑色とピンク色のバイカラーのトルマリン
オレンジ色とピンク色のバイカラーのパパラチアサファイア

バイカラーを集め出したのは、「見たことのなかった『スフェーン』のバイカラーを発見したから」。スフェーンは主に黄~緑色の、屈折率の高いギラギラとした輝きを持つ、モース硬度5~5.5の比較的軟らかい宝石だ。バイカラーは豊富な色のバリエーションを持つトルマリンやサファイア、クオーツのルースが一般的で、「こんなのあるんだ」と衝撃を受けた。「どんな宝石でも、バイカラーになるのかもしれない! この目で見てみたい! 一生をかけて全部集めたい!」。宝石の神秘に脳を焼かれた瞬間だった。

「どんな大富豪も不可能」

現在のコレクションは100石ほど。バイカラーの魅力を十分に楽しむため、「長方形のカットで、真ん中でスパッと色が分かれているタイプ」を厳選して集めている。理想を目指して、コレクションの入れ替わりは激しく、海外の業者から交流サイト(SNS)を利用して直接買い付けることも多い。「どんな大富豪でも、これだけの石を瞬時に集めることは不可能だと思う。宝石コレクションは一期一会の積み重ねだと実感する」

無色と茶色のバイカラーダイヤ
黄色と青色のバイカラーサファイア

トラブルを防ぐため、購入したルースは、第三者の鑑定機関に出して、鑑別書を発行してもらうようにしている。価値の違う類似石や模造石、見た目では判断できない処理をされた石が流通しているためで、「思っていた石種で間違いないかの確認は必要。もし違っていたら…、相手とバトルが始まります」。

学士同等の資格取得に励む

国内のミネラルショーなどもよく訪れ、コレクター同士の集まりを開き、まだ見ぬ石への情報収集を欠かさない。「知識があればあるほど、自分が欲しい石のイメージが明確になる」と、2年前から体系的に宝石を学問として学び、英国政府から学士同等のレベルだと認められているFGA(英国宝石学協会特別会員)の資格取得に励んでいる。「正しい知識を持って、宝石やルースの魅力、集める楽しさを、たくさんの人に伝えたい。宝石コレクターの味方、駆け込み寺になりたい」といい、「コレクター人口が増えれば、流通も増え、目当てのルースが見つかる可能性も高くなる」と笑う。その姿はもはや求道者だ。

ルーペをのぞきこみ、ルースを調べるわいたろうさん。宝石には神秘が詰まっている (関勝行撮影)

いま探しているのは、「赤いルビーと青いサファイアのバイカラー」。「ルビーもサファイアも、もともとは同じ宝石。ただ一石に赤と青が組み合わさったバイカラーは、本当に幻といえるほど希少なんです」とほほ笑んだ。(三宅令)

宝石(ルース)

研磨しただけの宝石。指輪やネックレスなどの枠に留められる前のもので、「カット(研磨)石」や「裸石」とも呼ばれる。宝石は一般的に、鉱山から原石が採掘され、原石が研磨されてルースになり、ルースが枠に留められてジュエリーやアクセサリーになる。

ダイヤやルビーなどの王道から新発見の宝石まで、色や形、研磨の良しあし、インクルージョン(内包物)の有無などにより、千差万別で値段もさまざま。

国内では、東京・御徒町の宝飾問屋街や、全国各地で開催されているミネラルショー(ルース・鉱物・化石などを扱う展示即売会)などで、実物を見ながら購入できる。

バイカラーとは、1つのルースに2つの色を持つもの。複数色を持つものはパーティーカラーと呼ばれる。

「沼」とは?

没頭することで日常から切り離され、仕事や人間関係の憂いからも解き放たれる…それが「趣味」である。そんな趣味世界の深淵をのぞき込んだ人たちが共通して感じるのが、自分たちは今「沼」にはまっているという感覚。ゴールの見えない収集趣味、創造性が高く技術と知識の研鑽が必要な趣味。現代社会を心豊かに生きるために必要な「趣味の世界」に心酔し、抜けるに抜けられなくなった人たちの、苦しくも楽しい「沼」を紹介する。

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