骨髄移植が患者の命つなぐ 30年伝えてきた学生ミュージカル、大阪・関西万博で公演へ

09-17 作者admin

骨髄移植の推進を訴えるミュージカル「明日への扉」の一場面=13日午後、大阪市北区のザ・シンフォニーホール(山田耕一撮影)

骨髄移植推進に向け、30年にわたって大阪の専門学校生が制作・公演を重ねてきたミュージカル「明日への扉」が2025年大阪・関西万博で公演されることが決まった。音楽やダンスを学ぶ大阪スクールオブミュージック専門学校(大阪市西区)の学生たちが企画から出演まですべてを担い、先輩から受け継いできた舞台。「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマの万博で、骨髄移植によって助かる命があるというメッセージを世界へ発信する。

白血病などの治療のため骨髄移植が必要な患者とドナー(提供者)をつなぐ骨髄バンクの現状を知った学生たちが、「自分たちにできることは何か」と考えて企画し、作り上げた。平成6年の初演以来、新型コロナウイルス禍で中止となった年を除き毎年公演を行っており、多くの舞台人を業界に輩出。観客動員数は23万人を超える。

「明日への扉」は、ミュージカルスターを目指す女性たちの物語。ライバルが慢性骨髄性白血病と判明し、主人公が葛藤を抱えながらも成長する姿を通じ、「生きることのすばらしさ」を描いている。ドナーになるための条件や現在の登録者数、患者とドナーのHLA(白血球の型)が適合する確率といった骨髄移植の現状のほか、医師がドナーに提供意思を最終確認する場面など、リアルな演出も盛り込まれている。

今月12、13日にはザ・シンフォニーホール(同市北区)で公演され、同校や大阪ダンス・俳優&舞台芸術専門学校(同市西区)など滋慶学園COMグループの学生ら総勢490人が計3公演に臨んだ。俳優やダンサー、ミュージシャンを志す学生らが舞台に立ち、音響、照明、メークなども全て手がけた。これほどの規模の学生ミュージカルは珍しいという。

公演に向けた準備は、今年も春から学生たちが進めた。オーディションで配役が決まると、歌やダンス、演技の稽古を重ね、リハーサルを重ねて開幕。13日、182回目となった公演本番では、のびやかな歌声や息の合った演奏、迫力あふれるダンスに、観客から惜しみない拍手が送られた。

ミュージカル出演を通じ、与えられた役を全うするやりがいを感じたという古川花季(はなき)さん(20)は「骨髄移植やドナー登録への理解が広がってほしい。これからも伝えていきたい」。堤帆楓(ほのか)さん(21)も、「骨髄移植が必要な患者さんや家族のために、自分にできることをしようという心が大事だと思う」と力を込めた。

公演終了後、出演者らによる募金活動には、多くの人が協力する姿が見られた(山田耕一撮影)

公演後、出演者はロビーで観客に骨髄バンクへの登録や、募金への協力を呼びかけた。募金は日本骨髄バンクのほか、白血病で亡くなった女優の名前を冠した「夏目雅子ひまわり基金」に寄付。30年間続く取り組みは骨髄移植推進の大きな力となっており、万博会場での公演で世界に向けた発信が期待されている。

2025年万博での公演は、夢洲(ゆめしま)(同市此花区)会場内のEXPOホール(シャインハット)で来年6月16日に予定されている。

ドナー登録者の現状は

白血病をはじめとする血液疾患の治療には、「骨髄移植」などの造血幹細胞移植が行われる。日本骨髄バンクのホームページによると、ドナー登録には、骨髄・末梢(まっしょう)血幹細胞の提供の内容を十分に理解している▽18歳以上~54歳以下で健康▽体重が男性45キロ以上、女性40キロ以上-の条件がある。実際に提供できるのは、20歳以上~55歳以下の人で、家族の同意が必要となる。

献血ルームなどでドナー登録をした後、患者とHLA(白血球の型)が適合すると問診や採血を実施。ドナーに選ばれると提供意思の確認を経て、全身麻酔下での腰骨からの骨髄採取か、腕の血管からの末梢血幹細胞採取のいずれかの方法で提供する。

移植を必要とする患者とドナーのHLAが適合する確率は、他人同士の場合は数百~数万分の1にすぎないため、多くのドナー登録が必要という。今年8月末現在で、血縁関係のないドナーからの移植を希望する患者1679人に対し、ドナー登録者数は約55万人。(吉田智香)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。
©著作権2009-2023デイリー東京      お問い合わせください   SiteMap