「早く島に行けるように」 北方領土元島民らが洋上慰霊 根室沖合の船上から60人が祈り

09-17 作者admin

先祖が眠る多楽島に向かって手を合わせる元島民の工藤繁志さん(中央)=16日午前、北海道根室市沖(代表撮影)

北方領土の元島民らが船の上から先祖を供養する洋上慰霊が16日に行われた。今年度は7回の計画で実施されており、この日は6回目。ロシアのウクライナ侵攻に伴い、墓参を含むビザなし訪問ができず、その代替策として北海道などが令和4年から始めたもので、今年で3年連続。元島民らは船上で故郷を見つめながら「早く島に行けるようにしてほしい」などと切実な思いを語った。

当初は15日に実施予定だったが、悪天候のため出港を延期。根室港に停泊中の北方領土交流事業で使用する船「えとぴりか」船内で交流会などを実施した。

16日は早朝から晴天に恵まれ、午前8時に出港。午前9時ごろから根室半島の約10キロ沖合の船上で慰霊式が執り行われ、元島民ら約60人が船上デッキの祭壇に献花し、手を合わせて先祖を弔った。

元島民を代表して追悼の言葉を述べた千島歯舞諸島居住者連盟の鈴木日出男副理事長(72)は、「私たちにとって、ふるさとの島を訪れることができない状況が続いていることは誠に無念。まずは北方墓参が早期に再開され、御霊が眠る私たちのふるさとの地で、一日も早くお墓参りができることを切に願ってやまない」などと語った。

7歳まで多楽島で暮らしていたという工藤繁志さん(85)=根室市=は、「突然、ソ連兵が土足で家の中に入ってきた。船をチャーターして家族で根室に逃げた。その根室のまちは空襲により80%が焼け野原で、395人が亡くなっていた。悲しく、厳しい経験をしたから本当に島を懐かしく思う。亡くなった両親や兄に代わって島に上がり、手を合わせたい」と話した。

今年度の洋上慰霊は8月20日に1回目が行われ、9月21日に最後の7回目が実施される。(坂本隆浩)

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