続・アクティブ対パッシブ

06-28 作者塚本 憲弘

1年前のコラム2023年5月22日付「アクティブ対パッシブ」にも取り上げたテーマですが、2023年のアクティブ運用投資信託の成績はどうだったのか、今年もS&P社からSPIVA日本スコアカードと呼ばれる国内で取り扱われている株式ファンドについての対ベンチマークの成績集計が示されました。

2023年にベンチマークをアンダーパフォーム(劣後)した日本のアクティブ運用ファンドの割合は日本株全ファンドで78%、大型株ファンドで82%に上り、ここ10年間で2番目に高い割合となりました。相対的にアナリストのカバーが少ないことで投資機会が見つけやすいとも言われる中小型株ファンドでも同割合は67%となっています。

2023年の日本株は脱デフレ期待、円安進行、東証の市場改革などを背景にTOPIXで25%上昇と2013年以来の好調な1年でした。相場付きとして大型株主導の上昇で、また指数を上回るパフォーマンスとなった銘柄の割合が低下したことも指摘されます。

これらはあまり知られていない銘柄からリターンを得ようとしたり、時価総額に沿ってポートフォリオのウェイトを設定しないファンドにとっては不利な状況です。また物色の広がりに欠くことは超過収益の機会を見つけることが少なかったことになります。

アクティブ運用には全体的に厳しい環境の1年となりました。価格の透明性や流動性が高く運用コストが抑えられるETF(上場投資信託)が人気化しており、このような上昇相場では何らかの指数に連動する商品を買っておけばリターンは出ますし、手数料を多く払うのも気が引けるでしょう。

以上は全体としての統計ですが、一方で長年優秀な成績を収めるアクティブファンドも勿論存在しています。また、相場が困難な時こそ真価を発揮してくれると期待されるのがアクティブファンドの良さの一つでもあるでしょう。昨年も申し上げましたが、アクティブファンドは投資哲学への共感や興味ある分野への投資の手助けになります。

なお、ヘッジファンドも含め各投資家の指数連動型ETFへの資金流入が加速することで各資産が買われており、資産間の相関が高まっています。これは何かのときに一斉に逆流するリスクともなり短期的には注意も必要です。

ETFへの対抗もあり、これからのアクティブファンドにはオルタナティブ投資のような伝統的資産や代表的な指数とは違う動きも求められます。通常アクセスしづらい投資対象などエッジの効いた投資機会を提供することで、パッシブファンドと共に資産運用を盛り上げていくことを期待したいです。

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