<朝晴れエッセー>はがきに季節をのせて
10-18 作者admin
私は、時々、美しい季節の移り変わりを、はがきにしたためて誰かに伝えたくなる。
その誰かの、お一人、Tさんは遠くにお住まいの主人の友人だ。11年前に主人が亡くなったとき、お悔やみの便りをいただいたことがきっかけで季節の便りのやりとりが続いていた。
そのTさんから文通を卒業したい旨が婉曲的に書かれた便りが届いた。私自身もいずれは考えなければいけない…と思いつつも一抹の寂しさはあった。
何はともあれ、今までの感謝の気持ちだけは最後に伝えておきたかった。私はTさんに、最終となるはがきを出した。
驚いたことにTさんから再び便りがきた。そこには、この度のことは終活の一環だったけれど、つきあいは自然の成り行きに任せればよいのではと思い直したというようなことが書かれていた。
私の便りが未練がましいものだったのだろうか。
あれからもうすぐ2年になる。今、程よい距離感で文通が続いている。
猛暑の日々も去り、高い空には刷毛(はけ)で掃いたような雲が広がっていた。
私は、そんなことを、はがきに書いて、いそいそとポストに向かった。
田川あつ子(76) 兵庫県川西市
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