<朝晴れエッセー>カエルのお盆

07-04 作者admin

私はアマガエルを飼育している。

カエルとの出会いは2年前の盆休み。父の墓参りに出かけた先で突如現れた。きれいな黄緑色の体に真っ黒なつぶらな瞳をパチパチさせる姿に一目で心奪われ、連れ帰った。

幼少期から生き物が好きだったが、カエルを飼育するのは初めて。温度や湿度、どんなすみかを好むのか、下調べを念入りにしてガラスケージをレイアウトし、エサのコオロギを調達し、カエルに良い環境で過ごしてもらいたくて躍起になった。

物言わぬカエルがクワックワッと鳴き、だんだん人なれしていく姿が愛らしく、忙しい日々の癒やしになった。

しかし不思議なことに、その年を境に次の年も、やはり盆休みの墓参りでアマガエルが現れるようになった。

昨年はわが家の墓石に刻んでいる文字の隙間にカエルが入り込んで昼寝していて、思わず笑ってしまった。なんだか父がカエルの姿になってお盆に帰ってきているのではないかと思えて一層、カエルへのいとおしさが募った。

今春、最愛の母も天国へ旅立った。母は生前、喜々とカエルの話をする私に「カエルの何がそんなに良いんだか」と言いながら笑っていた。

今年の盆休みも私は墓参りに行く。そこで再びカエルに会えると信じている。きっと母が帰ってきているはずだ。


北村早苗(37) 大阪市鶴見区

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