香港市場は長期的な上昇トレンドに変換するか

06-28 作者戸松 信博

4月~5月中旬の香港株が大幅に上昇した3つの理由

【1】香港、国際金融センターの強化策

2024年4月1日から5月20日(※)の中国株の騰落率は、上海総合指数は+3.0%、香港ハンセン指数は+16.0%となっています。香港ハンセン指数が大幅に上昇している理由は、中国証券監督管理委員会(CSRC)が香港と中国本土の株式市場の相互取引制度(ストックコネクト)を拡充し、香港の国際金融センターとしての地位を高める5項目の措置を打ち出したことが要因です。このため、大幅に割安となっていた香港株に急激に資金が戻ってきています。

これまで習近平政権は共同富裕の方針のもと、不動産や株式市場などで大きな富を築いた個人や法人に対して厳しい姿勢をとっていました。それが今回、香港市場を国際金融センターとしての地位を高めようと発表したことで、投資家の安心感が大きく拡がりました。

【2】低迷する不動産市況の支援策

さらに、5月17日には中国当局が住宅ローン規制を緩和する一方、地方政府には売れ残った住宅の買い取りを求めました。これは低迷する不動産市況の支援策の中でも大きな政策となっています。その他にも中国人民銀行は1軒目と2軒目の住宅購入時のローン金利下限を撤廃、さらに初回住宅購入者の最低頭金比率を15%に、2軒目購入者の最低頭金比率を25%にそれぞれ引き下げました。

【3】経済政策に重点

その他にも中国政府の経済顧問が中国人民銀行は財政刺激策を促進するためにより積極的な役割を果たすべきだと述べるなど、中国政府が明らかに経済政策に重点を置くようになっているメッセージを送っていることもあります。これまでにも書いてきたように香港市場の主要企業の業績は決して悪いものではなく、その中で株価だけが大幅に下落している状態でしたので、バーゲンハンティング的な資金流入が続いているというのが香港市場の状況だと思います。

香港市場の株価にはまだ割安感がある

もちろん、今後どうなるかは中国政府の政策次第となります。中国株の全体的な方向性がどうなるかの一番のキーポイントは中国共産党の政策がどうなるかです。4月以降に打ち出されている政策は、明らかに株式市場や不動産市場、中国経済を支援するものです。大きな政策転換がなければ、このまま株価は回復していく可能性があると思います。それだけ中国株は2021年以降、徹底的に売られ続けて、欧米や日本の株式市場と比べ割安感があります。

香港ハンセン指数で言えば、2021年2月18日に31,183.36の高値を付けてから2022年10月28日には14,770.09という半値以下まで下がると言う安値を付けました。そこから反発したものの、再び下落し、2024年1月22日には14,794.16まで下がりました。チャートを見ると、ちょうどこの2点がダブルボトムとなって株価は大きく反発しています(図表)。それでも2024年5月20日の終値は19,636.22ですから、2021年2月18日につけた高値31,183.36の63%程度までしか戻っていません。

【図表】ハンセン指数 週足チャート 一目均衡表
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年5月21日現在)

週足の一目均衡表で見ても、遅行線が株価を上抜け、転換線を基準線が上抜け、株価が雲を上抜ける三役好転(一目均衡表の強い上昇サイン)が達成されそうで、中長期のトレンドがようやく上昇トレンドに入ることがチャート的にも期待されるところです(図表)。

長期的な上昇トレンドへの転換の可能性

ここまでの時価総額別の上昇率を見ると、大型株が全体的に堅調な推移となっています。たとえば、時価総額で最大銘柄のテンセント(00700)は2024年1月22日につけた260.20HKDの安値から、5月16日には一時+54.1%となる401.00HKDまで上昇。また、時価総額ベースで2位の中国工商銀行(01398)は2024年1月22日につけた3.51HKDの安値から、5月20日には一時+35.6%となる4.76HKDまで上昇しました。セクター別では資源価格の上昇から資源セクターが堅調で、たとえば金価格の上昇に敏感に反応する中小型の金鉱株、招金鉱業(01818)は2024年2月5日につけた7.05HKDの安値から、5月20日には+118.4%となる、15.40HKDの高値を付けています。

前回執筆した通り、これまで増配や自社株買いに積極的でなく、割安に放置されていた日本の大型バリュー株が、日本版コードシップ改革の結実によって欧米の投資家から見直され、大きく資金が流入して株価が大きく上昇しているように、中国株についてもこの1~2ヶ月で状況はがらりと変わったと思います。もちろん、中国共産党の政策が経済や市場に好意的なものが続くということや、企業の好業績が続くことが前提ですが、長期的な上昇トレンドへの転換の可能性がようやく出てきたところと思います。

(※)香港ハンセン指数の騰落率は、4月1日(月)がイースターマンデーの祝日で休場だったため2024年4月2日(火)~5月20日(月)までで算出。

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