【日本株】市場規模が初の1兆円を突破、注目の「100円ショップ」市場関連銘柄

06-28 作者和島 英樹

出店ラッシュが続く「100円ショップ」、2030年までに国内累計1万店舗に到達する見込み

調査会社の帝国データバンクによると、2023年度の「100円ショップ」(大手4社ベース)の市場規模が前年比5%増の1兆200億円となり、初の1兆円に到達した。10年前と比較すると市場規模は約1.5倍になっている。

店舗網でいうと、大手4社の店舗数は2024年3月末時点で8,900店前後と、前年から200店以上、過去10年では約3,000店の増加になった。各社とも小さな都市型店舗などで積極的な出店を続けている。

一方で、不採算店を中心に閉店・退店も進み、全体では約3%の小幅な伸びにとどまった。各社では引き続き年間100店舗前後の新規出店が継続しており、帝国データバンクでは2030年までに国内累計で1万店舗規模に到達すると予想している。

「100円ショップ」市場の成功要因と課題、そして次なる戦略とは

2023年度の100円ショップ市場の隆盛は、3万品目を超える食品の値上げなど物価高の影響で強まった「節約志向」が追い風になった。また、購入頻度の高い日用雑貨のブラッシュアップも奏功している。

ただ、100円ショップに並ぶ商品は輸入品も多く、円安は輸入コスト上昇としてデメリットになる。原材料や人件費コストも上昇傾向で、コストダウンでは賄いきれない状況にもなってきている。

そのため、各社は100円以外の高付加価値商品の取り揃えも強化している。100円ショップの中でも300円や500円の商品を増やす動きもある。店舗でも、よりデザイン性や品質を高めた「300円ショップ」のカテゴリーが増加している。帝国データバンクによると「300円ショップ」の店舗数は2023年度末に1,000店舗を突破し、過去5年間で2.8倍になった。

100円ショップの最大手でパイオニアは「ダイソー」を展開する大創産業で、非上場企業だが「ダイソー」だけで国内3,813店舗(2023年12月末)と圧倒的な首位を誇る。日本のみならず世界に店舗を展開し、300円ショップ「THREEPPY(スリーピー)」も拡大している。1972年に家庭用品の販売を目的として矢野商店を創業し、1977年に大創産業として法人化した。商品ジャンルではなく「100円均一」というジャンルを作ったのが同社だ。かつては株式上場の意向を示していた時期もあったがトップの交代もあり現在では立ち消えになっている。

拡大する「100円ショップ」市場、今後の発展が期待される関連銘柄

では、ここで100円ショップ市場に関連した注目の銘柄をピックアップする。

セリア(2782)

業界2位の100円ショップ「セリア」を展開。「Color the days(日常を彩る)」をブランドテーマとし、スペースに余裕を持った店作りに特徴がある。また、早くからDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、リアルタイムPOS(販売時点管理)システムを導入。欠品防止や商品回転率などの他、商品開発にも活かしている。他社が100円以外の高額商品へ傾注する中、あえて“100均”にこだわった展開を行っている。円安などのコスト高に苦しむ場面もあったが、セルフレジの導入による省人化などで対応、また原価高対応も進展しており、物価高の影響による消費者の節約志向の高まりで見直されてきている。定番の日用品やメイク系の需要が拡大し、2025年3月期は営業増益を見込んでいる。

【図表1】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月20日時点)

ワッツ(2735)

業界4位。販売とレジ作業を委託し、商品陳列と発注を同社が行う「委託型」の小型直営店を展開している。これにより、出店しやすく、人件費も抑制できるのが特色。品揃えを絞り、食卓、台所、文具など生活に役立つものを優先的に提供している。また、高校生など若年層向けの美容・コスメにも注力。2018年にディスカウントショップを買収するなどM&Aに積極的で、海外展開にも前向き。2024年8月期は円安影響を不採算店閉鎖による粗利益率向上で営業増益転換へ。

【図表2】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月20日時点)

パルグループホールディングス(2726)

若い女性を対象としたファッションアパレルで多数のブランドを保有。300円ショップ「3COINS(スリーコインズ)」を展開している。ベーシックな生活雑貨から、空間を彩るインテリア雑貨などシンプルなデザインの商品を幅広い品揃えが特徴。2024年3月期末の店舗数は306店舗。同部門の売上高は630億6400万円(前年比29%増収)。

【図表3】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月20日時点)

アミファ(7800)

プラスチックや紙製のファンシー雑貨の企画開発・卸売りを展開。100円ショップ大手4社と取引がある。セリアと大創産業が大口顧客。社名は「アメニティ・FOR ALL」(あらゆる小物・雑貨)に由来している。キッチン用品、ラッピング用品の販売が好調。売上高比率はセリア向けが約50%、ダイソー向けは24%、特にキャンドゥ向けの伸びが大きくなっている。上期は円安で原価が悪化。2024年9月期通期の営業利益は2億4000万円(前期比32%増)を予想している。

【図表4】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月20日時点)

レック(7874)

清掃、バス・トイレ用品、収納用品などの日用品メーカー。清掃用グッズ「激落ちくん」(ダイソーでは「落ち落ち」としてOEM供給)、殺虫剤「バルサン」などを手掛ける。100円ショップ向けが売上高の約半分を占める。また、化粧品などが高い評価を得ている。2025年3月期は円安の影響で大幅営業減益見込みだが、保守的との見方が強い。

【図表5】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月20日時点) 
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