反応が限定的だった原油市場と米国の事情

10-13 作者大橋 ひろこ

ハマスによるイスラエル奇襲攻撃を受け、週明け9日月曜のWTI原油先物市場は一時5%超の上昇となりました。イランの関与が疑われることから第5次中東戦争へ発展するリスクを指摘する向きもあり、中東産油国からの供給が途絶える懸念を写した動きだったかと思われますが、足元では原油価格は急反落。投資家らが過度な警戒を緩めていることが伺えます。

米国としては原油高騰=インフレの再燃は避けたい。さらに9月にイランとの囚人交換とともに凍結していたイラン資産およそ60億ドルの解除に踏み切っていたばかりだということも間が悪い。真偽は不明ですがこの資金がテロ組織に流れるとの指摘も少なくありません。イランの関与が確定的となっては困るというのが本音かと思われます。

トランプ政権下にあった2018年、米国は核合意から離脱、対イラン制裁を復活させイラン産原油輸出は制限されているはずですが、バイデン政権下ではイラン産原油輸出は増加していました。2023年年初のイランの原油生産量は日量約250万バレルでしたが8月には310万バレルにまで増加。エネルギーインフレ抑制から米国がイラン原油輸出への取締りを緩和させていたことが指摘されています。サウジアラビアやロシアが減産を強化する中で、イランの原油生産増加は米国にとってありがたいことだった、というわけですが、今回の件でイランの関与が認められてしまえば、イラン闇増産の取締り強化どころかさらなる制裁の強化に踏み切らざるを得ず、再び原油価格高騰をもたらすリスクが大きいのです。

イスラエルは戦争状態であることを宣言しており決して予断を許さないのですが、原油市場はイランの関与を認めたくない事情や思惑を汲んで動いているようにも見えるのです。

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